女子 「あの・・・。前から好きだったんです・・・。付き合ってくれませんか?」
忍足 「・・・・・・悪い。好きな人おるから。」
女子 「そうだったの・・・。ごめんなさい、忙しいのに時間とらせて・・・。」
忍足 「いや、俺が悪いんや・・・。」




向日 「侑士〜・・・。お前、またフッたのか〜?」
忍足 「・・・・・・あぁ。」

さっき、告白されていたのは、忍足 侑士。彼は、見た目はクールで賢そうなイメージ(眼鏡付)、けれど話すと面白い(関西弁)、というギャップ(?)もあり、なかなかモテている。

跡部 「忍足・・・。まだ、引きずってんのかよ。」
忍足 「別に・・・。」

だが、忍足には好きな人がいるらしく、いつもフッてばかりいるようだ。それを知っているのは、何も、親友の向日だけではないらしい。

跡部 「代わりなんていくらでもいるだろう・・・?」
忍足 「代わりなんて、おらへん。跡部かて、この世に1人しかおらへんねんから。」
向日 「(いや、跡部がいっぱいいたら、キモイだけだぞ・・・。)」
跡部 「なんか言ったか、向日?」
向日 「何も・・・。」
 「はい、みなさん。そこまで〜!」
忍足 「・・・!」

そう言って、3人の間に入ってきたのは、マネージャーの だった。

 「もう、練習は始まってます。忍足君、向日君はあっち。跡部君はみんなに指示。」
跡部 「わかってるよ。」
向日 「じゃあ、行くか。侑士。」
忍足 「あぁ。・・・行こか。」


跡部 「・・・・・・・・・なんで、止めたんだよ。」
 「だって、辛いもん・・・。見てるこっちが。」

も忍足に好きな人がいるということを知っていた。だが、どうやらは、で忍足に想いを寄せているらしい。

跡部 「そんな、甘ったれたこと言ってっから、忍足にわかって、もらえねぇんだよ。」
 「いいよ、それでも。忍足君が辛くないなら。」
跡部 「だからって、いつまでも自分の気持ちを隠しているつもりか?」
 「・・・・・・でも、さんには敵わないもん・・・。」


向日 「侑士、なんでフッたんだ?あの子、結構カワイかったじゃねぇか。」
忍足 「だから、俺とは付き合わん方がえぇねん。」
向日 「侑士・・・。まだ、のこと・・・。」


昔、忍足には彼女がいたのだ。 。とても、キレイで優しく、話せば話題の尽きない人だった。
けれど、は不運にも、トラックに、はねられて死亡してしまったのだ。運転手は、酒を飲んでいたらしい。
翌日、氷帝学園の3年全員は、葬式に行った。
みんな、の死を、とても悲しんだ。「あんな、いい人が・・・。」と。


忍足 「俺が、他の女の子と付き合うてしもたら、が悲しむかもしれへんしな。」

忍足は、明るい口調で言ったが、表情は暗かった。


跡部 「だからって、あのまま放っておくのかよ。」
 「それは・・・。」
跡部 「アイツは、のことを忘れたくないんじゃない、忘れられないんだ。」
 「当たり前だと思うけど・・・。」
跡部 「いや。アイツは過去に縛られてるだけだ。忘れないことと、縛られるってことは、違うからな。」
 「・・・・・・。」



しばらくして、休憩時間に入った。

向日 「〜!」
 「わっ!何?急に・・・。」
向日 「お前、侑士のこと、どう思う?」
 「どう思う、って・・・?」
向日 「あのままでいいと思うか?」

向日は、真剣な顔つきで問い詰めた。

 「思わないけど・・・。」
向日 「侑士はきっと、忘れたくない、っていう気持ちもあると思う。だけど、俺には・・・。」
 「『過去に縛られてる』・・・?」
向日 「そう。」
 「跡部君も言ってた。」
向日 「そっか〜・・・。お前は?」
 「う〜ん・・・。なんか、それは、それで仕方が無いと思う。でも、このままじゃいけない、 とも思う。」
向日 「だよな〜。じゃあさ、から説得してくれないか?男の俺らから言っても、聞いてくれねぇと思うんだ。」
 「私でも、聞いてくれないと思うよ。」
向日 「大丈夫だって。な?言ってくれよ。俺も、あんな侑士見んの、嫌だし・・・。」
 「わかった。」




部活は終わり、みんな着替えをし、下校しようとしていた。

 「忍足君、今日一緒に帰らない?」
忍足 「えぇで。」

は下校中に話そうと考えたのだった。
他愛のない話を続け、しばらくすると、は話を変えた。


 「忍足君って、やっぱり今でもさんのこと、好きなの?」
忍足 「・・・・・・なんでや?」
 「私も、好きだよ。いい人だったし。もっと仲良くしたかったなぁ。」
忍足 「急にどうしたん?」
 「あのね・・・。今日、跡部君と向日君と話してたんだけど・・・。忍足君、なんか縛られてない・・・?」

忍足の表情が固まった。

忍足 「どういう意味や・・・?」
 「なんかね、忍足君。私達から見てると、そういう風に見えるの。」
忍足 「・・・・・・。」
 「こんなこと言ったら、失礼だと思うんだけど・・・。忍足君、今、幸せじゃないでしょ?」
忍足 「そら、が死んだのに、幸せになられへんし。」
 「そうだと思うけど・・・。さんは、忍足君に幸せになってほしい、と思ってるはずだよ?私がさんの立場なら、そう思うもん。私でも思うんだから、優しいさんは、絶対に思ってるはずだよ。それは、忍足君が1番わかってるんじゃない?」
忍足 「・・・・・・。」

の言っていることは、正しい。だが、忍足は、感情と言うものが、それを正しいと判断したくないようだった。

 「私だって、もし、忍足君が死んじゃったら、きっと悲しくて、毎日毎日泣くと思う。だけど、そんな私を見たって、忍足君は嬉しくないでしょ?私のこと好きじゃなくても、そう思うんだから、忍足君のことが好きなさんは、絶対思ってるんじゃない?」
忍足 「・・・そうやな。」
 「向日君と跡部君が言ってたんだけどね、忍足君。気になってる人いるんでしょう? でも、さんに悪いから・・・、とかそう言う理由で認めてないんだって、2人は言ってた。」
忍足 「そうかもしれへん。」
 「でも、認めた方が、きっとさん、喜ぶと思う。少しは、嫉妬もするかもしれないけど・・・。だから・・・・・・。」

は、どう言えばいいのか、わからなくなってしまった。

忍足 「そうやな。認めるわ。俺はのことが好き、やって。」
 「えっ・・・!」
忍足 「は、どうなん?・・・って言っても、さっき、俺が死んだら悲しむ、って言っとったしなぁ・・・。」
 「あっ・・・。」

そう、さっきは『さん(大好きな人)が死んで、悲しいと思う。私だって忍足君が死んだら、毎日泣く。』と言っていた。・・・つまり、忍足のことが好きだ、と言っているようなものなのだ。

忍足 「・・・で、どうなん?」
 「ホントに・・・?」
忍足 「ホンマや。・・・付き合ってくれるか?」

は信じられない、というような表情をしていた。

 「私でいいのなら・・・。」
忍足 「全然OKや。」
 「ありがとう・・・。」
忍足 「いや・・・。」

礼を言うのは、こっちや・・・、そう忍足は思っていた。

忍足 「(・・・。は、こんな奴や。やったら、もえぇやろ?次は・・・。)」
 「忍足君、次、さんのお墓に行く時、一緒に連れてって。」
忍足 「えっ・・・。」

忍足は、自分と全く同じ考えをしている、の言葉に驚いた。

 「ダメならいいんだけど・・・。なんか、今からでも、仲良くなれそうな気がして。」
忍足 「あぁ。きっと、なれるで。はえぇ奴やから。」

過去というものは、きれいに見えてしまう。「あの頃はよかったのに・・・。」そう、比べてしまうのが人間だ。

忍足 「俺、を比べてしまうかも、しれへんけど・・・。」
 「いいよ。さんのことは、忘れちゃいけないんだから。誰も、忘れろとは言ってないのよ?忍足君。」

過去は忘れてはいけない。たとえ、どんなに醜くても。

忍足 「そうやな。」
 「うん。いつまでも、さんのことは好きでいなくちゃ。ね?」

過去は忘れず、縛られず・・・。それが自分の未来を切り開く、鍵となるのだ。













 

おぉ、暗い・・・!!暗すぎる・・・!!すみません・・・。
しかも、元カノの名前をお友達の御名前にしてしまって・・・。あまり、気分が良いものではありませんので、この話を読むときは名前変換を変えていただくと、ありがたいです。
というか、もう全体的に微妙で、すみません・・・。
私が中学生のとき、中島みゆきさんの「永久欠番」という詩が国語の教科書に載っていたので、それを読み、誰の代わりもいないというテーマで書かせていただきました。

このままでは暗いので、やや明るい話を・・・。
今回、向日さんが男前だと思うんですね!というか、私自身は男前に書いたつもりです!(笑)
親友思いで、暗い話でも明るくしようと心がけ・・・。
これからも、『男前がっくん』を目指していきますね!!(←何かが間違っている)